未来の先生展2018所見

先日未来の先生展2018に行ってきて、いくつか刺激的な内容があったので、感想とともに紹介する。印象的だったのはN高等学校、キリロム工科大学、フィンランドの教育である。

未来の先生展2018

【N高等学校】

N高等学校とは学校法人角川ドワンゴ学園が運営する、ネットコースを基本とした高等学校であり、もちろん高校卒業資格が得られる。2016年に開校したばかりであるが、2018年に8箇所のリアルな校舎もできている。基本的な高校卒業資格を得るための授業の全てをインターネットで受けられ、それ以外にもプログラミング、アニメや小説などの創作、職業体験、ニコニコ超会議での文化祭など多様な教育を受けることができる。

衝撃的だったのは、高校卒業のための勉強は1日1時間で終わるという。授業はビデオで受講でき、先生が板書をしたり質問に答える必要がないため時間が大幅に短縮できるという。その分できた時間は生徒指導に当たっているという。

友達とかできるかというと、バーチャル空間で出席をとったり、同じ趣味同士で集まったりできるので、割と仲良くできるらしい。部活として囲碁部やサッカー部(ウィニングイレブン)など結構あるらしい。囲碁か将棋で灘高校(日本有数の超進学校)に勝ったこともあるとか。

また学費がめちゃくちゃ安い。世帯年収によって異なるが、3年間で40万円弱しかかからない。公立高校で120万円弱、私立高校で300万円以上かかると言われるので、公立高校の3分の1である。

BOND-BBT大学で学んでいる私としてはかなり親近感を覚える。ここの先生になってみたいとちょっぴり思った。もちろんまだスタートしたばかりで、課題も多いと思うが、これからの新しい教育の形になればいいと思う。

N高等学校 | 通信制高校(広域)・単位制

【キリロム工科大学】

キリロム工科大学(KIT)は成長著しいカンボジアに2014年設立された、ITと英語を軸とした大学である。学長は猪塚武氏である。KITは全寮制で学費は奨学金でほとんどすべて賄うことができる。あとは世界からの寄付金で成り立っている。

学生は今のところ現地のカンボジア人と日本人が多いらしい。日本人が留学していると聞くと、結構びっくりした。チャレンジ精神の溢れる若者である。日本企業にとって高度なIT技術を持った人材を育成してくれるという期待があるらしい。

キリロム工科大学(KIT) - キリロム工科大学へようこそ!

フィンランドの教育】

近年フィンランドなどの北欧諸国が注目を浴びているが、教育方法がその一つである。ここ10年ほどフィンランドは世界学力調査で上位に食い込んでいる。近年順位を下げている日本としてはフィンランドの教育の秘訣を研究しようとする動きがある。

フィンランドの教師は基本的に大学院卒以上で、人気の職業である。先生たちは自分自身が学ぶことを重視しており、学ぶことと働くことが一体になっている。また基本的に公立高校しかなく、それでいて全国で教育水準は一定であるのは、教師の力量が高いからだと言われる。またかなり教師の裁量に任されており、学習指導要領が絶対ではない。

生徒は自分自身で決断する経験を重視され、自分の好きなことや得意なことを重点的に勉強することができる。職業体験が頻繁に行われ、かなり本格的に学ぶ機会がある。また社会の中で市民として、消費者としてどのような行動をするべきかを考えさせる。

【考察】

私は基本的に日本の教育は高水準であると考えている。人口が1億人を超える国で、これだけ公教育がしっかりしているのは日本しかない。リーダーやエリート、天才がいないと言われるが、これは公教育とのトレードオフであると考えている。教育において全生徒を平均的な学力を向上させることと、一部の生徒を集中的に育てることを両立することは難しい。

私はこのエリート教育と公教育を両立することが、21世紀の教育として重要だと考えている。すべての国民が十分な教育を受け、地道な労働によって経済を支える一方、エリートが新しい新時代の方向性を導くことが健全な国を造ることであると思う。留学生や移民を受け入れて多様性を受け入れることは大事なことだが、頂点と土台はやはり日本人によって成立することが前提だと考える。

駆け込み寺

【背景】

日本において寺は7万件以上あり、5万件あるコンビニや2万件ある郵便局よりもはるかに多い。しかし一般人にとっては寺に訪れる機会は冠婚葬祭くらいでかなり少ない。仏像や建物に歴史的や美術的な価値があれば観光の対象となるが、そのような寺はかなり稀である。座禅や写経を体験できるお寺もあるが、まだ敷居が高い。

寺は全国のほぼ全ての過疎地にでもあり、お堂や境内のような広いスペースがあるため、有望な資源とも言える。それを利用してAirbnbと提携して宿泊施設として提供するお寺も出てきている。とわいえこのような流れに乗れる寺も、それなりの人的資源や環境整備が必要となるし、なにより寺本来の役割から外れているような気がする。

 

【解決策】

寺にNPONGOの広報活動の場を提供し、役所では対応できない相談できるプラットフォームになる。各寺や宗派は共感できるNPO法人と提携し、情報と相談の窓口になる。何かしらの悩みを抱えた人が気軽に立ち寄って、お坊さんに相談でき、実際に解決するための行動を勧める。またNPONGOの活動報告や講演の開催場所にもする。NPOの情報は宗派の本部が精査し、情報を共有できるようにする。

寺とコンビニ、どちらが多い?:日経ビジネスオンライン

寺に宿泊できる「テラハク」6月サービス開始に向け、Airbnbと業務提携 | 日本最大級の民泊情報サイト MINPAKU.Biz | 民泊・Airbnb運用代行比較

ジョイント出版

【背景】

出版不況と言われながらも、日々出版社は新しい書籍を出版している。これはある意味で、それだけ本を出したいと思っている人間が多いということでもある。出版社としては売れる本を出版したいわけであり、それでいてヒットする本を完全に予測できるわけでもない。出版社に相手にされなくても、どうしても売りたくて自費出版をする人も少なくない。

【解決方法】

出版に必要な資金の一部を著作者が負担し、場合によってはクラウドファンディングのように一般から公募する。そのためにコンセプトや作品の一部を一般に公開する。出版社が負担した経費を差し引き、本が売れた利益を出資の割合に応じて分配する。これによって出版社は出版にかかる費用を軽くできる。また一般に公募することで宣伝効果もある。

これは出版物をベンチャー企業のように考え、出版社と一般の出資者がベンチャーキャピタル著作権を債権のように考えている。出資者の中にはヒット作を見抜く目利きのような人が現れるかもしれない。また良質な本を生み出すために積極的に投資するエンジェルのような役割を生むかもしれない。

出資者のメリットは金銭的なリターンを得られることを期待する他に、売れたら自慢ができることである。

【余談】

本アイディアは百田尚樹氏の「夢を売る男」のビジネスモデルを参考にしている。本書では主人公の編集長は悪どい商売をしているというイメージだが、ビジネスモデルとしては有りだと思っている。

夢を売る男 感想 百田 尚樹 - 読書メーター

ジョイント出版

【背景】

出版不況と言われながらも、日々出版社は新しい書籍を出版している。これはある意味で、それだけ本を出したいと思っている人間が多いということでもある。出版社としては売れる本を出版したいわけであり、それでいてヒットする本を完全に予測できるわけでもない。出版社に相手にされなくても、どうしても売りたくて自費出版をする人も少なくない。

【解決方法】

出版に必要な資金の一部を著作者が負担し、場合によってはクラウドファンディングのように一般から公募する。そのためにコンセプトや作品の一部を一般に公開する。出版社が負担した経費を差し引き、本が売れた利益を出資の割合に応じて分配する。これによって出版社は出版にかかる費用を軽くできる。また一般に公募することで宣伝効果もある。

これは出版物をベンチャー企業のように考え、出版社と一般の出資者がベンチャーキャピタル著作権を債権のように考えている。出資者の中にはヒット作を見抜く目利きのような人が現れるかもしれない。また良質な本を生み出すために積極的に投資するエンジェルのような役割を生むかもしれない。

【余談】

本アイディアは百田尚樹氏の「夢を売る男」のビジネスモデルを参考にしている。本書では主人公の編集長は悪どい商売をしているというイメージだが、ビジネスモデルとしては有りだと思っている。

夢を売る男 感想 百田 尚樹 - 読書メーター

政治家ドットコム

【背景】

基本的に私は政治家というものを信用していないが、政治家が介入した方が圧倒的に早く物事が解決することがあることは事実である。待機児童とか少子化対策とか環境問題とか、世の中技術的制度的に、少し工夫すれば解決できる問題はいくらでもあるが、一般市民がそれを実行するには時間と労力と、時としてお金が必要になる。しかし地方政治家が一声かければあっさり解決することができるかもしれない。

【解決方法】

弁護士ドットコムや弁理士ドットコムのように、各地方に直接提言や相談をできるサイトを作成する。各政治家のプロフィールには拠点と得意分野、実績などが閲覧できるようになっており、相談事を投稿できるようにする。詳しい事情をもっと話したければ、メールなどでやりとりをする。

政治家にとっては自分の実績や注力分野をアピールできる機会ができる。特に新人や無所属の議員からすれば新しい活躍の場ができるかもしれない。有権者にとっては直接政治家に意見を言える窓口ができる。

そもそも地方政治家とは何をやっているのか、一般市民には意味不明である。地方選挙なのに国政なんかを、どっかで借りてきたような言葉で語る政治家が多すぎる。もっと働け、政治家!

 

本屋に旧作セット

【背景】

AmazonなどのECサイトの出現によって、本屋の売り上げが減少している。Amazonの長所の一つとして膨大な種類の書籍を探すことができる。本屋の長所は立ち寄って立ち読みでき、気に入ったらその場で買うことができ、輸送費もかからない。短所は書籍の種類が限られ、ほとんど新作しか販売されず、本屋ごとに差別化ができない。

【解決方法】

新作ではなく過去の名作をセットで本屋に送る。本屋には専用の展示場所を設けて、セットをまとめて揃える。売れたら売れば分だけ補充し、売れない本は次の本屋に輸送する。

これによって本屋は販売する本のラインナップを差別化でき、顧客は新しい本との出会いができ、出版社は余った本を有効活用できる。

創作物のための技術、時代考証監修

【背景】

近年の小説、マンガ、映画などの創作物は、専門的知識を必要としているものが増えている。例えば時代小説であれば時代考証、SF作品は科学技術的な考証がかなり正確になっている。この考証が足りないとときに視聴者から激しいツッコミを受けることがあり、特に最近はTwitterなどのSNSにより、個人が批判的な意見を発信しやすくなっている。しかしこのような考証は常に更新されており、素人に最新の知識や情報を更新し続けることはかなり困難である。

ちなみに私も結構ツッコミを、特に技術的や科学的なことには、入れる方である。プロフェッサーなので。

【解決方法】

知識や情報を持った人間を登録しておき、必要とする知識と情報を持っている人間に相談できるようにする。登録する人は、自分の得意分野や学歴などをプロフィールに書き込んでおく。相談はskypeなどを通じて行う。

まあこういうのはどこまで考証するかが問題になるわけだが。シン・ゴジラで、あんなでかい生物は地上に上がったら自重で潰れますと指摘されたらどうすんだって話でもある(それ以外がリアルなだけに)。